今日の庭から・テッポウユリ

やっと雨があがり日もさした今日ですが、蒸し暑かったですね。明日の午後から再び雨模様だそうです。雨ですこし傷んでしまいましたが、テッポウユリの白い花が咲き始めました。
    
我が家の庭では最初に咲くユリの花です。そういえば、テッポウユリなどの日本に自生するユリを海外で最初に開花させたのは、1823年に日本にやって来たドイツ人でオランダ商館付き医師/博物学者のシーボルトだそうです。冊子「ラリックに咲いたシーボルトの『和の花』」(箱根ラリック美術館)に詳しく書かれておりますが、一部をご紹介させて頂きます。
シーボルトは27歳の時に鎖国下の日本にやってきました。江戸時代は花壇綱目や花壇地錦抄などの園芸本が出版されたり、変化朝顔や斑入り植物などを愛でたり、美しい植木鉢の制作など日本の園芸文化が大きく花開いた時代ですね。
園芸ブームが起っている江戸時代にやって来たとはなんとタイミングの良いこと! 見事な庭園や驚嘆すべき数々の園芸植物を目にしたシーボルトは、単調なヨーロッパの庭園を日本の植物で変えようと決意し、苗木や種子、球根などを精力的に集めました。
1829年、日本を帰国する時には、収集した植物を生きたまま船でオランダに送り出しました。集められた植物の中にテッポウユリカノコユリスカシユリなども含まれておりました。それらの球根類は長い航海にも耐え、その後ガン市(現在はベルギー領、当時はオランダ領でした)の植物園で見事に開花したそうです。
     
ラリックの作品の中にテッポウユリをモチーフにした作品があります。ペンダント/ブローチ「ユリの女」です。表紙はその写真です。
この作品がつくられた19世紀はちょうど日本からヨーロッパへユリの球根が輸出された時期と重なり、芸術の分野でもジャポニスム全盛期でした。
この作品の英名はEaster Lily といいます。キリスト教では、ユリは聖母マリアの純潔を象徴する花とされていますが、当時、テッポウユリイースターの儀式で欠かせない花でした。その理由は、それまで用いられていたマドンナリリーよりも早めに開花させる開花調整が容易なこと、花もちがよいことなどからです。勿論花の美しさもありますが、19世紀後半にはテッポウユリは海外で大人気な花となっていったのです。テッポウユリをモチーフとした作品の英名の由来がよく分かるエピソードですね。
ラリックはササユリをモチーフにしたペンダントの制作案も作っているのでした。こちらの英名は、Sasa Lily です。この制作案では葯が茶褐色に描かれています。それはイメージだけではなくて、ササユリという植物の形態的な特徴までも正確にとらえて描いているのです。大好きなササユリがラリックの目にとまっているとは! 嬉しいです。
2008年4月19日から9月23日まで、箱根ラリック美術館にて「ラリックに咲いたシーボルトの『和の花』」展が開催されました。シーボルトが紹介した日本の植物をモチーフにした素晴らしい作品の数々にため息をつき乍ら見学したことを思い出します。
その時に求めた冊子が「ラリックに咲いたシーボルトの『和の花』」なのです。この冊子にも書かれておりますが、ラリックは植物の特徴をよく観察し、理解していたのですね。そのことをふまえた上、デザインをすすめていた事は1つ1つの作品を通してよく分かりました。そして・・・この展覧会を見学したときも自然は一番のお手本!という思いを強くしたのでした。出来る事なら、もう一度、いえ、何度でも見学したい展覧会、再開してくださらないでしょうか???