夏休み子猫物語

 お盆休みが始まり、自宅周辺はひっそり、静かです。お盆休みになると思い出すのは、今から11年も前の夏の日の出来事。
 朝、明日から夏休み!と出勤する夫を門で見送る時、何処からか猫の鳴き声が聞こえていたのです。
 気になって玄関の周りを見ていたら、お向かいの奥さまが、我が家の車庫から聞こえてくると教えてくたさったのです。車庫の隅の塀際の人目にもカラスにも分からないところでノラの猫さんが出産したことが分かりました。子猫の姿もチラッと見えていました。
    
 さあ、どうすれば良いのでしょう。猫のことは全くわからなくて、愛犬の動物病院にお電話したり、すごく暑い日でしたから猫さん達の体力も心配でオロオロしました。ちょうど、回覧板を持っていらした近所のWさんが、母猫を見て、心当たりがあるからと子猫のお父さんを探して下さったのです。我が家のすぐそばのお宅で飼っているオス猫のフクちゃんがお父さんと分かりました。
    
 それから、フクちゃんの飼い主のA子さんやWさん、Wさんのお友達、みんなで五匹の子猫の保護と飼い主探しが始まったのです。母猫の桐子さんから生まれたての子猫を保護するのに時間がかかりました。五匹の飼い主を見つけるのも大変かしらと思っていました。我が家の車庫で生まれた猫ちゃんたちなので、我が家で引き取れば良いのでしょうけれど、その時、家には老犬がいて、彼の世話だけで手一杯な状態でした。
 一匹は、A子さんが引き取ってくださることになり、柚子ちゃんと言う名前になりました。それから、三匹はすぐに決まったのですが、最後の一匹はなかなか保護できませんでした。
 母猫の桐子さんが警戒して桐子さんに連れられた子猫は我が家の庭を移動し、ついには、桐子さんは子猫を咥えて道路を隔てたお宅のお庭に逃げ込んでいたのです。たまたま、そのお宅の留守中、草花の水やりを頼まれていたWさんのお母様がお庭の植え込みにいるのを見つけて、やっと最後に残った子猫を保護できたのです。
    
 ドラマチックな運命をたどりました猫ちゃんですが、写真付きのチラシを動物病院に貼って頂きました。直ぐに飼いたいと申し出て下さったのは近所にあるインターナショナルスクールの先生でした。東京と清里にお家があるそうで、今頃はバイリンガルな猫ちゃんになていることでしょう。

 母猫の桐子さんはフクちゃんのお家で暮らすようになって、子猫の柚子ちゃんと母娘一緒になりました。心優しいA子さんは、猫の名前に植物の名前を付けているのです。この猫ちゃんたちが良いご縁になってA子さんともお友達になれました。感謝。

 ちょうど夫が夏休みの一週間、子猫物語で毎日過ぎたのでした。結果はメデタシ、メデタシ!
 ご近所の皆さまの優しい気持ちと母猫の愛情深さに感動した夏、思い出深い夏休みとなったのでした。